※本稿は、和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■加齢とともに知らず知らず「頑固」になっていく理由
65歳を過ぎたら「心の老い支度」が非常に大切です。
その理由の1つとして、脳にある前頭葉の萎縮が進むことがあります。
前頭葉とは、ちょうどおでこから頭頂部のあたりに位置し、大脳の約3分の1を占める部位です。思考や意欲、理性、性格などをつかさどり、とくに、微妙な感情の表現や、感情に基づく高度な判断を行っています。
「悲しくて泣く」「腹を立ててケンカをする」などといった原始的な感情ではなく、「何かに感動する」「好奇心やときめきを持つ」「気持ちをコントロールしたり切り替えたりする」といった、レベルの高い「人間らしい思考」に関与しているのが前頭葉なのです。
前頭葉の萎縮は、年を取れば誰にでも起こります。私にも、あなたにも起こっています。そしてそれは、早い人の場合、40代から始まるのです。
ただし、萎縮のスピードはとても緩やかであるため、自分では変化に気づきにくいものです。
一方、久しぶりに再会した人に対して、「前よりも頑固になった」「すぐイライラするようになった」「疑い深くなった」など、変化に気づくことはないでしょうか。
人は加齢とともに思考の柔軟性を失い、頑(かたく)なになり、感情の表現力が鈍くなっていくものです。これは、前頭葉の萎縮によって起こっています。
心の老い支度をせずに放置していると、頑固者はますます頑固に、怒りっぽい人はますます怒りっぽく、気が弱い人はさらに気弱になりやすいのです。
前頭葉は、脳の中でも最も遅く成熟し、最も早く老化していきます。ただし、人は脳の1割程度しか使いこなせておらず、9割は残存させているといわれます。
ですから、たとえ前頭葉の萎縮が進んでも、残存している残りの部分を意識して使っていければ、それをカバーできます。そのためにも、心の老い支度が役立つのです。
■右派の人は左派、左派の人は右派の文献を読んでみる
では、前頭葉の萎縮に対して、どう老い支度をするとよいのでしょうか。
ここも、足し算健康術で考えましょう。一度萎縮してしまった脳を、再び大きくすることはできませんが、前頭葉がつかさどっている思考力を高めていくことは、何歳になってもできます。
そこで1つ、今日から実践できる方法をお伝えしましょう。
「そうかもしれない」という思考パターンを自分に足すことです。
「そうかもしれない思考」とは、誰かがいった言葉、本や新聞、雑誌などに書いてあった文章を鵜呑みにせず、
「そうかもしれないが、別の見方もあるよね」
と、積極的に別の考え方を探していくことです。
前頭葉が老化すると、物事の「決めつけ」が激しくなります。自分が「こうだ」と思い込むと、周りが「そうとも限らないんじゃない?」と異論を唱えても聞き入れられなくなる状態です。こうして思考がこり固まり、頑固になっていくのです。
そこで、たとえば、保守的な政治志向の読者が多いとされる産経新聞を読んでいる人は、反対意見の論調を持つ朝日新聞を読んでみてください。
「そうかもしれない思考」を行うことで、「その意見も一理あるな」「やはり、ここは違うんじゃないか」など、思考の幅が格段に広がるとともに、前頭葉にも刺激を与えられるのです。
ほかにも、時代劇のドラマが好きな人は恋愛のドラマを見てみるなど、普段は接しないジャンルに挑戦するのも有効です。
このようにしていれば、たとえ前頭葉が萎縮しても、柔軟性があって前向きな考え方ができるようになるでしょう。
■自分を苦しめる「かくあるべし思考」の呪縛
心の老い支度では、物事の受け止め方を変えていくことが大切です。
前頭葉が老化すると、物事の「決めつけ」が激しくなると先述しました。この物事を決めつける思考は、「かくあるべし思考」となって現れます。物事を「こうあるべし」と決めつけ、それに反することが許せず、不安を高めていく思考のあり方です。
たとえば、定年退職によって長年続けた仕事を辞めて、家にいる時間が長くなると、「オレは、もう社会から必要とされていない人間なんだ」と、自分を過小評価してしまう人がいます。
これは、「人間は働いて、人の役に立ってこそ、価値がある」という、「人とはこうあるべき」との決めつけによって起こる不安な感情です。
では、「人は働くのが当たり前」とは、誰が決めたのでしょうか。自分で「そうあるべき」と決めつけているだけ、それを常識と思い込んでいるだけのことなのです。
65歳を過ぎると、体力も徐々に落ち、若い頃と同じようには動けなくなります。そのとき、自分を「ふがいない」と思ってしまうのは、「動けるのが当たり前」と思い込んでいるからです。
このように、「自分はこうあるべき」という理想があり、その理想に囚とらわれていると、体力が落ちていく自分を情けなく感じてしまいます。
この「ふがいない」という感情は、「老いたら衰えるのが当たり前」ということを上手に受け入れられていないことの表れでもあります。
「かくあるべし思考」のように、人間の判断をゆがめてしまう思考パターンを「不適応思考」と呼びます。この不適応思考を持つ人は、精神的な落ち込みが強くなり、老人性うつを発症しやすくなります。
では、人はどうして不適応思考を抱いてしまうのでしょうか。それは、自分への要求水準が高い、いわば、頑張り屋さんだからです。
自分への要求が高いぶん、「頑張らなければいけない」と自分を追い込み、それができなかった場合、自分自身を情けないと感じます。
このように「かくあるべし思考」は、自分の考えで自分を縛るゆえに、思考が悲観的になっていくのです。
■「ポジティブ思考」よりも「別の可能性」を考えてみる
悲観的になっている患者さんのお話を聞くとき、私は「そういう考え方もありますが、そうとも限りませんよね」と、別の視点を持つようにアプローチしていきます。
この「別の視点を持つ」というアプローチは、私が精神科の治療で行っている「認知療法」の基本的な考えの1つです。
認知療法とは、本人が自分の思考の偏(かたよ)りを「認知」することによって、うつ病などの症状の改善を目指す療法です。この療法を行うことで、ネガティブ思考やマイナス思考など、否定的な考え方のクセを変えていくことができます。
たとえば、定年退職後に、「自分は必要とされていない存在だ」とネガティブに捉えると、思考が悪い方向に進み、不安が強くなっていきます。
ただ、ネガティブ思考に陥っているとき、「もっとポジティブに考えましょう」といわれても、そううまく切り替えられません。
そこで大切になるのが、「別の可能性を考える」ことです。
すべての物事には二面性があります。一見すると悪い出来事も、別の見方をするとよいことが必ずあります。
たとえば、「仕事が生きがいだったのに、定年を迎えてしまった」と思ったとき、「これからは好き勝手に生きていける」というよい面を見つけられるかもしれません。
このように、「悪い面」の裏に隠れた「よい面」を見つけられると、心がフッと軽くなります。ぜひ、取り入れてみてください。
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精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(出典 news.nicovideo.jp)
<このニュースへのネットの反応>
つまりパヨオンの事か
早い人で40代から前頭葉が萎縮していくと、決めつけが激しくなり <. 自己紹介かな?
感情のコントロールが出来ないんじゃ無くて出来るほど理性が無いヒトモドキ共が多いだけだが。少なくとも過去に1回でもデカい声出して我儘を通した奴は「とりあえず怒鳴り散らしたらいい」とソレを繰り返して周りは「何かまた喚いてら、面倒くさいからハイハイ言っとくか」と無駄に歳を重ねた40代が若手に同じムーブかますから目立つだけ。
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